先住民が照明革命 台湾 電球一新、電気代半減 自然と共存、伝統守る
30年前、台湾で最も遅く電気が通じた山中の集落が昨年、省エネ照明のモデル地区に指定され、集落の電球がすべて発光ダイオード(LED)などの省電力型 に取り換えられた。日本と同様、エネルギー源の大半を海外に依存する台湾では、省エネ技術の革新と普及が急務となっている。最先端の「照明革命」に取り組 む先住民の村を訪れた。 (台北・小山田昌生)
台湾北部の新竹県尖石郷。平野部から車で3時間半かけて、海抜1590メートルのスマングス集落にたどり着いた。小鳥がさえずり、冷たい山の空気が心地よい。人口は約170人、全員が先住民族のタイヤル族だ。
この集落に送電線が伸びたのは1979年。95年に外部との道路が開通するまでは、ほぼ自給自足の生活で、谷を挟んだ隣の集落まで歩いて数時間かかっていた。
■省電力3‐8割
台湾経済部(経済省)エネルギー局は昨年4月までに、同集落にある約870個の電球をすべて省エネ型に交換した。20ワットの白熱灯を5ワットの蛍光灯や2ワットのLED灯などに切り替えることで、同等の明るさを保ちながら、30‐80%の省電力効果がある。
電球は台湾製で、エネルギー局が費用約60万台湾元(約180万円)を負担し、財団法人・工業技術研究院が技術協力。設置工事や街灯のかさに使う木彫りの 制作は集落住民が携わった。省エネ電球の価格は白熱灯の数倍するが、寿命も3倍程度長持ちする。昨年6月から今年2月までの使用電力量は49%減り、電気 代も減った。
エネルギー局によると、照明用電力は台湾の総使用電力量の12%を占める。「照明革命」のモデル地区に、この山奥の集落を選んだ理由について、同局は「山間部は送電コストが平地の何倍も高いので、より大きな節電効果が得られる」と説明する。
■土地共有制守る
電気のない時代、村人は夜をどう過ごしていたのか。頭目のイチェスロンさん(69)が小屋の中で、松の木切れに火を付けて見せてくれた。油脂分の多い松は あかあかと燃え、火持ちがいい。昔は日が暮れると明かりの周りに家族が集まり、親から子へ、生活の教えや部族に伝わる物語を語り継いだという。「松の木も 貴重だから、8時ぐらいには灯を消して眠りに就いた」と頭目は語る。
90年代、集落の奥でベニヒノキの巨木群が発見され、道路開通とともに登山客が訪れるようになった。最近は山荘も数軒建てられ、年間1万人余りが宿泊する。
この集落では土地を集落の共有財産とし、山荘経営やモモ、キャベツなどの栽培で得た収入も均等に分かち合う。仕事の割り振りなどは、朝の寄り合いで決め る。外部資本によって生活環境や共同体の調和が侵されないための知恵でもある。「私たちは電気を無駄に使わない。省エネに取り組むことは、自然を大切にし てきた民族の伝統的考えにも合うものだ」と、頭目は力を込めた。
=2009/04/20付 西日本新聞朝刊=
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