台湾のソーシャルネットワークの今を知る
もちろん、無名小站は台湾ローカルのソーシャルネットワークとして、特にサービス開始以来10年以上に渡ってユーザーが蓄積してきたコンテンツを持つ強み を依然として発揮しています。そこで、今回は台湾のソーシャルネットワークの入門編として、無名小站と Facebook の2つを見てみることにします。
無名小站は無料で使えるソーシャルネットワークサービスで、写真や映像を投稿できる個人のブログサービスとして、今でも台湾のほぼ全てのネットユーザーが 知るプラットフォームです。現在は約1,000万人のユーザーがいますが、既に2005年にはブログや写真共有サイトとして台湾で1位(当時はブログのカ テゴリーでは244万人のユニークアクセスユーザーと、23.7%のユーザー到達率で、2位の PChome 個人新聞台のいずれも2倍近い数値、創市際調べ)を誇っており、台湾のソーシャルネットワーク文化を作り上げてきました。その無名小站は、2007年に Yahoo!奇摩(台湾の Yahoo!)によって買収され、現在は Yahoo!奇摩の一つのサービスとして取り扱われています。
もともと台湾のソーシャルネットワークは、結構「開けっ広げに」投稿するという、やや日本とは異なる特徴があり、多くのユーザーがプライベートの写真を公 開したり、個人的な出来事をブログに書いたりしてきました。例えば mixi や GREE はログインしなければ投稿内容や写真を見ることはできませんが、無名小站の相簿(写真共有・アルバム)では見たい相手のユーザー ID さえ分かれば、ログインせずともすべての写真を見ることができます。
筆者が経営するクララオンラインの台湾現地法人であるクララオンライン台湾の現地社員も、少なくとも2006年頃には全ての社員が無名小站に ID を持っていたと記憶しています。彼らの様子を知りたいときには、よく無名小站のページを見ていました。少し距離が近づくと、「無名(無名小站のこと)の ID を持っている?」という会話も多かった時代です。
無名小站はそのビジネスモデルを当初は広告によって作り上げ、その後は有料会員の獲得によってマネタイズしています。例えば無料のユーザー ID では写真をアップロードできる容量は150MB に限られていますが、年間499台湾ドル(約1,400円)を払えば1.2GB、1,000台湾ドル(約2,670円)を払えば6GB まで使えるほか、投稿できるブログの上限や、自分のページのデザインの変更、ページから広告を外すことができる機能など、長く、しかもヘビーに使えば使う ほど会員ランクを上げていく課金設計になっています。
ところが、無名小站の独壇場だった台湾のソーシャルネットワークは、この2年ほどのあいだに一気に Facebook にそのリーディングポジションを奪われるという大きな変化がありました。2009年に、少し日本より早く Facebook ブームがきた台湾では、2010年初頭にはまだ Facebook と無名小站のユーザー数・ユーザー滞在時間には大差はありませんでした。しかし、その差は徐々に広がり始め、ユーザー数では2010年末に (comScore、2011年)、ユーザー滞在時間では2011年4月に Facebook が一位に躍り出ています(創市際「網站使用時間観察分析 」2011年9月版)。
台湾の主要な Web サービスのユーザー滞在時間を示した様々な資料を見てみると、トップ5に入る残り2つの Yahoo!奇摩や YouTube、Google の数値に大きな変化はなく、無名小站が減少を続ける一方、Facebook が急激に増加している様子が見てとれます。なお、直近の台湾の Facebook ユーザーは1,153万人(socialbakers など)とされており、人口に対してほぼ5割、インターネットユーザーの総数に対して7割という浸透率です。
ちなみに、中国大陸からは、Facebook はもちろんのこと、無名小站もアクセスを遮断されています。先ほどこの記事を書くために北京から直接アクセスしたところ、このアクセスは自動的に遮断されました。
台湾は1月14日に総統選があり、馬英九氏が総統に再選されました。台湾では選挙の最中のインターネット利用は自由度が高く、各陣営で選挙日の前日まで Facebook の更新は続けられていました。その馬氏は Facebook のファンページ(https://www.facebook.com/MaYingjeou)を2010年に開設し、この原稿を書いている時点では約139万人が「いいね」ボタンを押しています。一方、対抗馬として選挙戦を争った民進党の蔡英文氏のファンページ(https://www.facebook.com/tsaiingwen)の「いいね」は約66万人。実際の選挙戦では接戦でしたが、「Facebook 戦」では大差がついていたようです。
(執筆:株式会社クララオンライン 家本賢太郎)
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