日本統治下の台湾でインディカ米と日本の米を掛け合わせた良質米「蓬萊(ほうらい)米」の命名から88年となり、「米寿」を祝う式典が24日、台北市の台湾大学であった。台湾ではもともと長粒種のインディカ米を食べていたが、蓬萊米開発で今では短粒種がほとんどだ。
 植民地時代の台湾は、日本向けの食糧生産基地としての役割が期待された。日本人が好むジャポニカ米(日本米)も持ち込まれたが、気候が合わずにうまく育たなかった。そこでインディカ米と掛け合わせて品種改良を重ね、栽培方法も工夫。統治開始から約30年かかってようやく良質の米ができるようになった。
 こうした米を売り出すための「ブランド名」として採用されたのが「蓬萊米」だ。台湾が蓬萊仙島と呼ばれていたことから名付けられた。現在台湾で作られている米の多くは蓬萊米の改良品種で、台湾大学農芸学部の郭華仁教授は「蓬萊米は台湾人の食文化を大きく変えた」としている。
 台湾大学には、品種改良の研究に当たり、「蓬萊米の父」と呼ばれる故・磯栄吉氏や教え子らが作業していた建物が今も保存されている。在来種と掛け合わせた当時の日本米の品種「中村」を、冷凍保存されていた種子から再生する実験にも取り組んでいるという。(台北=鵜飼啓