【江藤詩文の世界鉄道旅】台湾鉄路“地上の風景”まもなく見納め…“昭和の駅舎”は新駅のシンボルに
2014.5.17 18:00
高雄駅9時発。台南駅を目指して4B番ホームから山線経由七堵行き自強号に乗り込んだ。出発してほどなくすると、両側の車窓に緑豊かな風景が広がる。南国ならではのまぶしい太陽がさんさんと降り注ぐ。「もうすぐこの光景ともお別れか…」。ちょっと感傷的な気分がよぎる。
台湾鉄路は現在、高雄市内の鉄道地下化計画を進めている。工事が行われるのは、高雄市の台鉄左営駅から高雄駅を通り鳳山駅まで。すでに着工し2017年末
には完成する予定だ。完成後は7カ所の平面交差と16カ所の立体交差が解消され、現在の高雄駅ともども取り壊されるという。工事現場のすぐ隣りに、旧駅舎が保存されていた。工事期間中は、高雄鉄路地下化展示館として一般公開されているという。
この駅舎は、日本統治時代の1940年に建設された。洋風の近代的な建築の上に和風の塔や寺院風の屋根をのせた「帝冠様式」という和洋折衷スタイル。「日本では、神奈川県庁本庁舎や静岡県庁本館で、帝冠様式を見ることができますよ」。台湾人の青年にそう教えられる。
日本趣味が色濃い建物だが、鉄道地下化と新駅舎の建設が決定したとき、台湾鉄路には、旧駅舎の保存を望む声が多数寄せられたそうだ。旧駅舎は、着工に先駆けて現在の場所に移築された。駅舎をそのまま台車に載せ、80メートル以上も牽引したという。
新駅舎が完成した暁には、再び台車に乗せて移動し、新駅舎と結合してエントランスになるとか。近代的な高層ビルの入り口を飾る旧駅舎。その姿を想像すると、なんだか完成が待ち遠しくなった。■ 江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に 裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デ ジタルで旅コラム
日本統治時代の旧駅舎取り壊し惜しんだ高雄市民
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